恋するつぶやき

恋する不安が少しでも落ち着きますように。彼のキモチと彼女のココロについてつぶやくブログです。

June 2015

仕事が忙しい彼が連絡不精で会えもしないというとき、
「愛情をどうやって感じたらいいの?」
と言いたくなる女性も多いと思います。

言葉も行動もない彼から、どうやって愛情を受け取ればいいのか。

仕事が忙しすぎる彼と
ちょっと不安が強い彼女が付き合うと、
すぐに小爆発が起きます。

ただでさえ不安なところにもってきて、彼が連絡不精ときたらそれも仕方のないこと。あなたが求めれば求めるほどに、彼は「仕事が忙しい」ともっと連絡が減り、会う時間などなくなってしまいます。

「そんな男は愛情がない」とあなたに忠告する人がいるでしょう。「彼女が寂しい思いをしているのに放っておくなんて」と。

もちろんそんな男だと思うのなら、さっさとお別れするのもひとつの選択です。


 

でもあなたがそんな彼でももう少し…と思うなら。
まずこんな風に考えてみてください。



もしもあなたが不安がちな女性なら。

たとえば女性の不安や自信のなさを理解しない人から見れば、あなたは「愛を理解しない身勝手でわがままですぐにキレるどうしようもない女」です。男たちの中には「あんな女やめとけよ」と言う人もいるでしょう。

だけどあなたは本当は、誰よりも人を愛したい女性のはず。ただ深く愛したい愛されたい、それさえあれば生きていけると思うほどに、情愛の深い女性です。ただ愛し方がわからないだけ。愛され方が不器用なだけ。生い立ちの中で抱えた不安が人より強いだけ。



それなら彼だって同じこと。

本当は誰かを強く愛したいと誰よりも思っている男かもしれない。誰かを幸せにする確かな力を手にしたいと頑張ってる最中かもしれない。本当は豊かな愛情を持った人かもしれません。一つのことしかできなくて不器用なだけ。普段は奥底にしまっているだけ。

そしてあなたと同じように、傷ついた心を抱えて愛することを怖がっている人かもしれません。




仕事を一生懸命する彼、
ちょっと打ち込みすぎるような彼は
人よりも実は
「愛を与えることを強く求めている人」
であることも多いのです。

責任感が強く自分に厳しい人。そうじゃなければ会社のために、社会のために、人のためにと真夜中まで働くことなどできやしません。愛情をかけたものが返ってくる、やればやっただけ評価される。つまり仕事というのはわかりやすい愛情の交換でもあります。それだって「愛したい」という強い愛情の表れです。彼女にとってはちょっと寂しい、不器用すぎる愛情かもしれないけど。

あなたの彼は「もらうより与えたい人」ではありませんか?

心配されたり気遣われたり支えられたりすることよりも、自分が心配したいし気遣いたい。支えになりたいと思っている人。

楽しませてもらうよりも楽しませたい。
応援されるより応援したい。
励まされるより励ましたい。
愛するより愛されたい。

仕事が忙しい男性には、「自分が愛する」ということに強くこだわっている人も多いのです。

激務でがんばる彼が「愛したい」人ならば、
あなたは「愛され上手」を目指しましょう。


「愛され上手」とはつまり「彼の愛情を上手に受け取れる」ということです。




愛情を上手に受け取るためには、まずはあなた自身がタフであること。愛されることを怯えないこと。自信を持って愛情を受け取れる人になること。「愛される自分」に自信がなければ、いつまでたっても受け取れず、彼にもっともっとと求めてしまいます。

それは「あなたから何ももらえてない」と叫んでいるのと同じこと。

忙しい彼にだって、今はどうすることもできないという状況があります。「愛したい人」である彼は、彼女を愛せてないことをちゃんと自覚しています。罪悪感を抱えた彼に「あなたの愛情は足りない」と泣いて叫べば、彼は与えるどころか後ずさりします。もっともっと遠ざかってしまうかもしれない。

そんな彼に対して、こちらがもっともっと愛するのはもしかしたら逆効果かもしれません。何度も言いますが彼は愛されたいのではなく「愛したい人」。自分がちゃんと愛せてるということに満足する人です。支えられたいわけでも元気づけられたいわけでもない。寂しくて泣いてる彼女を支えたいと、心の中ではいつだってそう思っています。たとえ今は何もできなくても。

だから彼には「じゅうぶんに愛してくれてるよ」というメッセージを送りましょう。口先の言葉ではなく、心からのフィーリングで。そのためにはもちろん、彼の愛情を心から実感できていなくてはいけません。

とはいえ連絡無精の彼からの愛情を実感できないままで、愛されてる自信を持つというのはなかなか難しいこと。だからこそ、タフになることが大事なのです。自分自身で、できるだけのセルフケアをまずしておくことです。




心理学では「目の前の相手に抱く感情の9割は、自分の過去に起因する」と言われています。彼とのあいだで強い不安を感じるとき、実はその心の叫びの9割は過去のものである。目の前の彼の責任はたった1割だと言われています。

たとえば幼いときにご両親との関係。忙しくて寂しい思いをしたり、他のきょうだいがいたために愛されてないと不安になったりしたことはないでしょうか。

たとえば思春期の友達との関係。ちょっとしたことで男子からかわれたり、同性の友達から仲間外れにされたことはないでしょうか。

忙しい彼になぜ?どうして?もっと愛してと求める前に、まず自分の心に「不安のタネ」がないかどうか、少し向き合ってみることも大切。それがセルフケアです。




少しタフになれたら、「すでにもう受け取っている」という態度でいることが二人の突破口になります。


彼が与える

彼女が受け取って感謝する「ありがとう」

また彼が与える

…… 

 

という愛情循環のループ。これがうまく回り始めると、お互いに無理なく安定した関係を築くことができます。

だからといって何も「与える」から始めなければという決まりはありません。ループになっているのだから、どこから始めたっていいんです。彼からスタートしなくてもいい。忙しい彼に代わってあなたから「受け取って感謝する」から始めればいいんです。

たとえば
「あのとき励ましてくれた言葉で今も頑張れてるよ」とか
「もらったプレゼント、今も一番気に入ってるよ」とか
今は何もしてくれない彼でも
彼を感じられる何かが
いつも自分を幸せ気分にしてくれてるんだよ、と伝えてみる。

彼と直接関係ないことでも
幸せだな、楽しいなと思えることは伝えてみる。
「彼のおかげで幸せに過ごせてるよ」という気持ちで。

「頑張ってるあなたを見ていて
 私も頑張るパワーがみなぎってくる」でもいいし。

久しぶりにメールをしてみるのなら
「元気?」と気づかうのではなく
「おかげさまで元気だよ〜」と伝えてみる。

どうしてもどうしても
彼から何ひとつ愛情が感じられないというときは、
「いてくれてありがとう」と、
彼という存在をまるごと受け取ってしまうことだってできます。

愛情を循環させるキーワードは与えるのではなく「受け取る」こと。最初は苦手でも、コツをつかめばちゃんとできるようになります。「愛される」「受け取る」は、どんな女性にも備わっている、最も女性らしい愛し方だからです。 




忙しい彼に理解のある彼女は、ついつい「与えよう」と考えてしまいがち。もちろんそれも間違いではありません。ですが少しだけあなたの意識を「受け取る」にスライドしてみてください。

感謝できること、
いてくれてよかったと思えること、
彼の存在が支えになってると感じること。

全然会えなくて連絡もままならない彼からでも、きっと何か受け取れることがあるはず。彼の愛情を探すことが「彼を愛する」ということ。わかりにくい愛情でも、彼を愛するあなたなら必ず見つけ出せるはず。

与えるのではなく受け取ること。
愛するのではなく愛されること。

あなたがまず「ありがとう」と受け取ることで、二人の関係が変わることもある。滞って淀んでいた愛情が循環しはじめるということもあるんじゃないか。そんな風に思います。



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わたしの大好きなあの人は
とっても仕事が忙しい

平日の夜はひとりぼっち
土日も仕事で潰れがち
電話もメールもあんまりない
仕事帰りのデートなんて夢のまた夢

「忙しいのは理由にならない」
「忙しい男ほど上手に恋愛してる」
「本気で惚れたらほっとかない」
「キャパが小さい男よね」
みんな勝手に言うけれど 

それでもわたしは彼が好き
仕事を頑張る彼が好き
 
半分ほんと、もう半分は自己暗示
顔で笑って心で泣いて

雑踏の中でひとりぼっち
記念日もイベントも通り過ぎる
次に会う日も決まらずに
まる一日のデートなんて夢のまた夢

あぁ会いたい すごく会いたい
どうしてこんなに会えないの
30分でも1時間でも
顔が見たいだけなのに 



そんなとき
いつもわたしが思い出す
チスイコウモリの愛のうた

お腹がすいた仲間のために
自分の血をも差し出せる
醜く不気味で心やさしい哺乳類

わたしだってそんな風に
大好きな人にやさしくありたい

彼にとって今このときが
生き残れるかどうかの勝負なら
 
わたしはよく食べよく眠り
二人分の元気の素をためこんで

いつか会えたらそのときは
彼の疲れを癒やしたい

忙しい大好きなあの人に
これがわたしの愛のうた






わたしの大好きなあの人は
とっても不器用で連絡不精

最初は彼からくれてたのに
今では電話もメールもさっぱりない
返信さえもなかったりあったりなかったり
LINEでラリーなんて夢のまた夢

「手に入ったから興味がない」
「ないがしろにされてていいの」
「フェードアウトを狙ってる」
「失いたくなければ連絡する」
みんな勝手を言うけれど 

それでもわたしは彼が好き
不器用すぎる彼が好き
 
半分ほんと、もう半分はやせがまん
伊達の薄着で風邪ひいて

たぶんこないとわかっているのに
鳴らないケータイが手放せない
今日こそ連絡くれるかも
着信音で目覚めてみたら夢の中

あぁメールしたい 話したい
どうして何の連絡もないの
ほんのひとこと
送ってくれるだけでいいのに

 

そんなときいつもわたしが思い出す
奇跡のワニの愛のうた

人類の百倍の時間を生き延びるため
じっと動かず食事は一年に四度きり
進化のために沈黙する
冷血動物の爬虫類

わたしだってずっと永く
彼と一緒にいられたら

口ベタな彼にとって「連絡」が
そんなにくたびれるものならば
 
わたしはよく笑いよく話し
ひとりの時間を明るくにぎやかに

いつか連絡がきたらそのときには
彼と楽しく過ごしたい

不器用すぎる大好きなあの人に
これがわたしの愛のうた





野生時代の愛のうたを知るまでは
長く苦しい日々もあった

男にとって仕事とは
男にとって恋愛とは
男にとってメールとは
男にとって連絡とは

男性心理も恋愛理論も
諳んじるほど頭に入れて
 
理解したい応援したい
受け入れたい信じたい
求めない追求しない
ワガママ言わない
返信なくても気にしない
会いたがらない
寂しい連絡ちょうだいと口にしない

してはいけないことばかりが気になって
恋する気持ちはおざなりで

今できることは
「とにかくそっとしておくこと」
「彼からの連絡をじっと待つこと」

頭でばかり考えて
がんじがらめになっていた

でもほんとうは気づいてた
不安で不安で仕方がない
辛くて悲しくて自信がない
今すぐ彼に確かめたい

だけど恐くて聞けやしない
口に出してしまったらもう最後
ガラガラと足元から
自分が崩れてしまいそう

だから気づかないフリしてた


 

あきらめなきゃと思うほど
心がちぎれてしまいそう
 
まだ待ちたいと思うほど
心の重さに潰されそう

だけどもう限界
もうダメ 
もう無理 
もう待てない
苦しすぎて辛すぎて
 
このままいたら
きっと私がだめになる

会えない彼に
連絡のとれない彼に
終わりの手紙をしたためる
感謝のメールを下書きする

どうせ最後になるのなら
きれいな思い出で終わりたい
いい女だったとずっと
ずっとずっと覚えてて

やさしいところが好きだった
励ましてくれたから頑張れた
仕事に打ち込む姿を尊敬してた
口ベタで不器用なのもわかってた
声聴くだけで嬉しかった
メールするだけでわくわくした
顔を見るだけで幸せな気分になれた…

あぁどうしよう まだすごく好き!
 
なのにどうしてあきらめるの
あと少しだけ
やっぱり彼を待ってみたい

出せない手紙は投函したらもう終わり
別れのメールは送信したらもう終わり

どうせ終わらせるなら明日でいい
別れのメールは
いつかまた今度また

今日はまだ
大好きなあの人を好きでいよう

わたしの野生がそう叫ぶ





おしゃべり好きのペンギンは
氷の上より海の中
 
黒い背中も真っ白な腹も
海で命を守るため
長いときには数ヶ月 
水の中で過ごしてる

この恋だってきっとそう
氷の上でよちよち歩み寄って
二人仲良く過ごしたら
 
今日からはまた別々に
群青の海へ飛び込もう

深く深く
どこまでも潜るほどに青深く
 
海の底でも不安じゃない
冷たい水でも寂しくない

彼だって今ごろは同じ海を泳いでる
いつかまた氷の上で会えるから

南極の海で離ればなれになっても
きっと二人は凍えない
 
これがわたしの愛のうた





彼の言葉と行動を
分析するのはもうやめよう
連絡と会う回数を
記録するのはもうやめよう
 
大好きな人がせっかくくれた愛情を
裏返して
あぶり出しして
日に透かして
検分するのはもうやめよう

頭でっかちになりすぎて
大事なものを見失ってしまうより

恋に溺れてはいけないと
駆け引きの池で溺れてしまうより
 
ケータイばかり気になって
この愛のうたが
聞こえなくなってしまうより

いつも小さく口ずさみたい
やさしく強くあたたかく
野生時代の動物たちの愛のうた


 


わたしの大好きなあの人の
笑顔 まばたき くちびる 声
繋ぐ手 触れ合う肌と肌 
湿った汗とそのにおい

すべてに胸が高鳴って
からだの芯まで熱くする

ほんとうは
出会えたときから聞こえてた
わたしの野生を呼び覚ます
大好きな人が奏でるあの愛のうた





今日もまたひとりぼっちの帰り道
 
会える日は今度いつだろう
そろそろ連絡くれるかな
月夜が照らす一本道を
今夜も一人歩いてく

きっと今ごろ
ザトウクジラも歌ってる
打ち寄せる波のうねりのリズムに乗せて
満天の星空に響かせて

人類が存在しない大昔から
クジラは月に歌ってた

もう
誰かと比べることはしない
愛情を測って嘆くこともない
焦って苦しくなることも
信じようと無理して耐えることもない

食べてるものを知らなくても
今いる場所を知らなくても
何をしてるか知らなくても

一緒じゃなくても一人じゃない
離れてるからって一人じゃない
連絡がなくてもひとりぼっちじゃない

野生時代を思い出せば
ゆるやかにたしかに今もつながってる
 
見なくても考えなくても測らなくても
心だけで感じられる愛のうた

ただゆったりと漂う潮に身をまかせ
クジラのように歌いたい
 
大好きなあの人を
好きだと思うこの気持ち

ここにいるよ。
頑張って。
大好き。

ふんわりまるく輝いた
あの月に向かって歌いたい
大好きな彼の名前を何度でも
それだけで心震える愛のうた

他の誰にもわからない
わたしたちだけの
この愛のうた

関連記事:「連絡不精の男とつながるには 」


月に歌うクジラ (ちくま文庫)
ダイアン アッカーマン
筑摩書房
1997-07


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むかしむかし
輝く瞳をもった小さな男の子が
裸足で野山を駆け回り
棒きれを拾い虫を捕まえ
日暮れまで

そのうち大きくなって少年になり
崖を登り川へ飛び込み
魚を捕らえ焚き火をおこして
夜明けまで

厚くなる胸板と強くなる拳
バネのようにしなり跳ねる背中と足
どんどんたくましくなるその身体を
小さな島で持てあまし

「そろそろここを出る頃だ」
 
自分で決めて、
見よう見まねで
小舟とオールをこしらえる。





むかしむかし
濡れた瞳の小さな女の子が
おうちのまわりで花を摘み
木の実と貝でおままごとをして
昼寝まで

そのうち大きくなって少女となり
花冠を編みおしゃべりをして
歌い踊って星の下

豊かに艶やかに伸びた髪
しっとりと潤い輝く素肌
母の腕の中のように温かな思いが
身体いっぱいに満ちて

「誰かに寄り添って眠りたい」
 
期待を込めて、
見よう見まねで
寝床の支度をととのえる。





あるときばったり二人は出会う。
 
出会ったまさにそのときから
なぜだか胸が高鳴って
 
戸惑いながらためらいながら
でも大胆に性急に
見つめ合ってささやき合って
手をつないで

二人は恋に落ちる。

朝も昼も夜も一緒に過ごし
語り合い肌を重ね
 
二人で眠る小さな寝床は
世界の中心となり
うっとりとこの世界には
彼と彼女の二人だけ。





ある明け方、
目を覚ました彼は唐突に思い出す。

作りかけの小舟があったこと
オールもまだ削りかけだったこと

「冒険に出かけなければ」と思い出す。

身につけた勇気と知恵を試すため
鍛えたその肉体で
どこまで行けるか知るために

「今すぐ出かけなければ」と思い立つ。

心地良い寝床をそっと抜け出して
小舟とオールをなんとか仕上げ
使い込んだ小さなナイフをポケットに
 
日の出とともに静かに沖へ漕ぎ出でる。

寝息を立てて
隣で眠る彼女の寝顔を思い出し
その寝床の
あたたかなこと柔らかなこと
ちくりと胸に刺ささりはしても

仲間はすでに旅立った
彼女の寝床で眠りすぎたと悔やみもし
思いはすべて断ち切って
この入り江から漕ぎ出でる。

幼い頃に岬から、
憧れるように見続けた
夕日が沈むあの水平線の果てへ
そのまた先の
朝日が昇る大陸の果てへ

自分の意志で決めたこと。
もう後戻りはしない。




目覚めたあなたは
その朝を境に天国から地獄。
 
だってこの世界は
二人だけのものだったのに
彼さえいれば
この世界は完璧だったのに

世界の中心だったはずの小さな寝床は
もはやぬくもりさえ残らず
ひんやりとして

心のこもった置き手紙なんてなく
あったとしても
ぶっきらぼうな一行だけ
「仕事が忙しくなった」
「もういっぱいいっぱい」
「しばらくそっとしといてほしい」

たまらぬ不安と寂しさで
いてもたってもいられずに
 
彼が漕ぎ出た浜辺まで
駆けて駆けて追いかけて
波のかなたに目を凝らせば
彼の小舟ははるか沖

あなたは膝からガックリと崩れ落ち
なぜなのどうして
どこに行くの
と泣き叫ぶ





そんなときのあなたに
どうかわかってほしいこと。

彼を呼び止めてはいけません
行かないでとすがってはいけません
戻ってきてと泣いてはいけません
忘れないでと念を押してはいけません
「私のこと嫌いになったの?」と
気持ちを聞いてはいけません

輝く瞳の少年が青年に育ち
今まさに大海原を目指そうと
漕ぎ出したこの明け方に

彼の小舟にいつまでもロープを繋ぎ
さみしいさみしいと
後ろから引っ張っていたら
彼のオールはどんどん重くなるばかり

あなたに繋がるロープを
ナイフで切ってしまうかもしれない。
疲れ果てて深い海の底に
船ごと沈んでしまうかもしれない。





泣いても叫んでも
二人だけの世界はもう終わり。

未来に向かって伸びる彼の手足を
小さな寝床に縛り付けても無駄なこと。

冒険に出るためにこそ
彼の人生はあるのだと
まずそのことを知りましょう。

別れも告げず発つ彼を
恨まず待っていたいなら
 
寝床の隣を彼のために
空けておこうと思うなら

水平線に消えていく彼の小舟を見送って
昇ったばかりの朝日に誓い涙を拭いて
彼ならきっとできると心から信じて

あなたはあなたの毎日を
ただ丁寧に生きましょう。

おいしいものを
おいしく味わえるように
 
美しいものを美しいと
感じられるように
 
人にやさしくできるように

なるべく笑顔で暮らすこと。
やるべき仕事に取り組むこと。
 
時には彼を思い出し、
元気でいてと祈ること。

そして一番大事なことは
自分の気持ちと人生を見失わずに
その両足で
しっかり立って生きること。





彼だって
まだ本当はこわいのです。

たったひとり
大海原に粗末な小舟で旅に出て
頼れるものはまだ細いその両腕と
小さなナイフがひとつだけ

いったいどこまでいけるのか
戦いに勝ち生き残れるか
彼女の元にこの島に
果たして帰って来られるか

震える手でオールを握りしめ
逃げ出したい日もあるかもしれない
勇者になれず賢人に遠く
うなだれ歩く日もあるかもしれない

石を研ぎ槍を突く術は知っていても
便りの書き方を彼は学ばず

枝を削り弓を引く術は知っていても
愛の伝え方を彼は学ばず

信じてほしいと言葉には出さず
くじけそうだと泣き言は言わず
寂しい思いをさせてると
詫びたい思いも抱えつつ

それでも彼は進み続ける
振り返らずにその道を行く
 
一人前のほんとうの、
なりたい男になるために





風に乗って
彼の指笛が聞こえてきたら
あなたも歌えばいいでしょう。
 
足に手紙を巻いた
フクロウが飛んできたら
あなたも返事を書きましょう。

覚えたばかりの子守歌
小さな島の四季のこと
葦の筵が編めたこと

冒険に出た彼の世界が
どんなに大きく広がっても
その中心は変わりはしない
目印となるこの島の
小さな小さなあなたの寝床

彼を思ってあなたが泣けば
彼の心がくじけるだけ
寂しい切ない帰ってきてと
それは言わずにおきましょう。

その日がいつになるのかは
神様でさえ知らぬこと
待ちたいならば待ちましょう
戻れるときに戻るから。

あなたが笑うその声は
潮風に乗り海を越え
きっと彼まで届くから

あなたはあなたの人生を
楽しく嬉しく機嫌よく
ただ大切に生きましょう。





ある夕暮れ、
 
あなたの前に
ようやく現れた彼は
強く鋭くたくましく
あの明け方よりずっと優しい
なりたかった男になっている。

疲れて眠る彼を
黙って抱きしめるあなたは
柔らかくあたたかく美しく
あの明け方よりずっと強い
なりたかった女になっている。




ひとりの寝床が広すぎて
眠れずにいる夜
 
枕元で揺れる
ろうそくの灯りに泣けてきても

大丈夫、
彼だって今ごろは
どこかの野原で焚き火を見つめ
あなたの寝床のぬくもりを思い出し
凍える体を温めている。
 
だから今夜一晩は
泣かずにひとりで眠りましょう。
 
いつかに続くこの夜だと思って。




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以前は頻繁だった彼からの連絡が
めっきり減ってなくなって
 
メールの返信が素っ気なかったり
ほとんどなくなってしまったり
LINEが既読スルーだったり
既読にすらならなかったり
会おうとしてくれなかったり。

はじめのうち、
胸騒ぎはするものの
まさかそんなと思い直し
 
もう一度メールしてみたり
不在着信を残してみたり
「話があるんだけど」と
おそるおそる伺ってみたり。

けれども彼の態度は
ますます素っ気なく
なぜだか知らないけれど
理由も言わずに
ダンマリを決め込んで

それでも信じたいと待つ女の方は
ろくに食べられもせず眠れもせず
息をするのも苦しいくらいに
締めつけられていくその胸には
胸騒ぎどころか真っ黒な暗雲が
たちまちいっぱいに立ちこめて

あぁやっぱり
悪い予感は当たってしまった!
 
大きく轟く雷を合図に
嵐の夜のはじまりです。




長い長いその夜を
不安の渦に
巻き込まれて過ごしながら
 
どうしてもどうしても
今すぐ彼に
確かめたいことはただひとつ、

「もう私のこと好きじゃなくなったの?」

 

「気持ちは何も変わらないよ」
「まだ好きだから心配しないで」
 
それだけ言ってくれれば
いくらでも待てるのに
 
こんな嵐の夜に
不安な思いをさせて
 
連絡ひとつ寄こさず
音信不通になるなんて

いったい彼は
今どこで何をしているのだろう?

ひとりぼっちで
取り残されて眠れぬ夜は
 
抱きしめてくれた腕の強さを
すり切れるほど思い出し
自分をなぐさめたり
最後に会った日、
最後のメールを確かめて
きっと大丈夫と自分を励ましたり
 
もしかしてあのとき?と
唐突に思い当たって落ち込んだり
全てが悪く結びついて
もう終わりにちがいないと絶望したり
こんなひどい男だったのかと
やりきれない怒りがわいたり
 
優しかった彼に
せめてもう一度だけ会いたいと
その切なさに泣けてきたり。

そしてやっぱり
確かめたいことはただひとつ、
 
「まだ私を好きでいてくれてる?」

それさえ聞ければ
この孤独な夜も明けるのにと
覚悟もできていないのに
嵐の中に飛び出して
彼を見つけ出し
気持ちを問いただして
雷に打たれる女もいれば

なすすべもなく
布団の中にもぐり込み
目をつむり耳をふさぎ怯えて泣きながら
ただただ嵐が過ぎるのを
じっと待つしかない女もいて

嵐を終わらせるのは、
たったひとつの言葉だけ。
 
「変わらず好きでいるよ」
 
と彼から聞けないかぎり
この夜の、
辛く苦しいことに変わりはなく。




そんな風に
眠れぬ夜を過ごす女性に
もしひとことだけ
声をかけるとしたら
こう訊ねてみたいのです。
 
「そんな彼を、あなたは本当にまだ好き?」

君が好きだと言ってくれた
記憶の中の彼じゃなく
また優しい態度に戻ってくれたらと
未来の彼に期待するのじゃなく

今この瞬間、
こんなにひどい嵐の夜に
あなたの元に駆けつけられない
情けない男を
ずぶ濡れで現れてゴメンと言われたら
黙って許せるのかどうか。

男らしく誓いを捧げてくれた彼ではなく
疲れてみっともなくて自信をなくし
理由も言わずに姿を消した卑怯な、
ただの意気地なしの男。

仕事か生活か、
とにかく
恋以外のことで頭がいっぱいで
少しくらい連絡しないでいても
彼女なら
待っててくれると安心しているのか
 
これが本当の自分なのだから
受け入れてほしいと
頑固に思っているのか
今まで去っていった女たちとは
本当に違うかどうか試しているのか
 
それとも
ただただ忙しいだけなのか。
面倒になっただけなのか。

どんな理由もただの言い訳、
連絡を寄こさず
会おうともしないという
動かぬ事実があるだけのこと。
 
つまりは
わがままで甘えているだけの、
ずるくて自分勝手な男。

そんな男、そんな彼でも、
この孤独な夜を乗り越えて
待ちたいかどうか
 
この先また同じことがあっても
「おかえり」と
優しく出迎えられるかどうか

涙をふいて暗がりに目を凝らし
自分の気持ちを
まず見つめるべきです。


 
 

彼の気持ちばかりを
確かめようとする前に
欲しい言葉を
むりやりもぎ取ろうとする前に

嵐の行方も人生も運命も
あなた自身の手の中にこそ
あると思い出して。

自分の人生を人任せにせず。
彼次第で
どうにでもなる女になるのじゃなく。
 
彼にNOとジャッジされたら
砂みたいに
崩れ落ちてしまう女じゃなく。
 
不安を消してほしくて
問いただすのでも
「私なんかどうせ」と
一人でみじめに泣くのでもなく。

自分の心の深いところまで
梯子を下りて
耳をふさぐ両手をはずし
心の声を聞くべきです。

彼という男を本心から
まだ好きで
待ちたいと思うのかどうか。


 
 

そうして決めたら
しっかり腹をくくること。
 
おへその少し下の方、
女の肝があるところに
ぎゅっと力を入れること。

女の強さは
そういうところにあるのです。
 
いったん覚悟を決めたなら
何があっても受け入れる強さが
どんな女にだって
備わっているのだと信じたい。

すべてを彼に委ねて
ただ審判を待つのではなく
 
やっぱり愛そうと
自分で決めたことならば
 
きっぱり断ち切ると
自分で決めたことならば
 
決めたその瞬間から、
もう運命は
変わりはじめているはずだと
信じたい。





それでもまだ、
暗闇の怖さに
ざわざわと気持ちが揺れて
嵐の夜に迷い込んで
眠れない夜は

何度でも何度でも、
まずは自分の気持ちに立ち戻ること。

そばにいてくれる男なら
彼じゃなくてもいいのかどうか
 
そばにいてくれなくても
どうしてもこの彼がいいのかどうか。
 
彼の言葉で決めるのじゃなく、
あなた自身が決めるのです。



 

眠れないのは
彼の気持ちがわからないせいじゃない。
 
怖がるばかりで目を背け、
あなたが決められずにいるからです。

怖い怖いと握りしめている
その手を開けば
まだそこに、
 
ちゃんと
あなたの人生があるのだと
何度でも思い出すことです。





そしてもし、
あなたが彼を待つと決めたなら。

彼が戻って来られない嵐の夜でも
ろうそくの灯りだけで
静かに待てるように
 
冷えきった彼の心と体を
あなたのぬくもりで
少しずつ暖められるように

生まれ持った
女の強さと思いやりを信じて
 
優しい気持ちで
心静かに待ってみてください。

彼だって、
この恋に不安も不信もあるのです。
 
こんな男で申し訳ないと罪悪感で
目をそらすかもしれないし
もう疲れた何もかもどうでもいいと
自暴自棄なのかもしれないし。

だから
二人の愛しい記憶はそのときのため。
夢見る未来もこのときのため。

そうやって
あなたの心が落ち着けば
雷雲は去り風も止み、
そのうち雨だって上がります。

最初から
嵐などなかったのかもしれない、
怖い夢を見ただけだったのだと
思えるほどに
静かで穏やかな朝が来ます。

そんな朝には彼の名を
そっと呼んでみてもいいでしょう。
 
返事がなければ表に出て
ゆっくり見回してみてもいいでしょう。

ただしひとつだけ気をつけて。
 
あなたが自分の心の不安に負けて
彼の名前を呼んでしまったら
 
くたびれ疲れ果てて
倒れ込んでいる彼は
涙まじりのあなたの声を
魔女のそれと勘違いして
叫ぶようなあなたの声を
魔物のそれと勘違いして

あの優しかった僕の恋人は
ここにはもういないのだと
二度と帰っては来ないかもしれない。

だから名前を呼ぶなら一度だけ
そっとそっと。
いつもよりもずっと優しく
耳元でささやくように。

まだまだ彼には
返事すらできないようならば
またもうしばらくは静かに待ってみて
晴れて風のない穏やかな朝が来れば

もう一度
恋しいその名を
そっとつぶやいてみる。

遠くからかすかに
彼の声が聞こえてくるまでは
そうやって静かに穏やかに、
彼を待ってみてください。

彼はきっと帰ってくると
心から信じられるなら
名前など呼ばずに
待っていたっていいのです。

待つ価値はあると
あなたが選んだ彼ならば
どんなに激しい嵐の中でも
どうにかしぶとく生き抜いて
 
大丈夫、
そのうち必ず帰ってきます。

ひとりぼっちの嵐の夜がまた来ても
あなたは穏やかに待ち、
彼は必ず帰ってくる。
 
男の愛はそうやってくりかえすこと。

最初のうちは
強がりでもやせ我慢でも
何度も何度もくりかえすうちに
結び目は強く固く締まり
 
心から信じられるようになる。
当たり前になる。
ひとりの夜でも幸せに眠れる。 
 
嵐の夜を
自分で終わらせることができる。

きっとそれを絆と呼ぶのです。





そしてもうひとつ、
彼のことは待てない
もう待たないと決めたなら。

勇気を出して雨戸をすっかり開けて、
どうか
外の景色を見渡してみてください。

空気のちりも
枯れ残った葉も
あなたの涙も
嵐がぜんぶさっぱり洗い流してくれて
 
滴る雨のしずくに反射する
朝の光の美しいこと。

それでようやく
あなたは気づくことができる。
 
泣きはらした嵐の夜も
この美しい朝に出会うためだった。

そういう強さも
女にはちゃんと備わってる。
 
また新しい朝を迎える力。
その美しさに感動する心。

あなたが自分で決めたこと、
その手で重たい雨戸を開き
その目で嵐の終わりを確かめた
勇気と強さを忘れずにいれば

どこかで行き倒れた彼が
あなたの元に戻ってくることは
二度となくても
 
その男の名を呼ぶことが
もう二度となくても

大丈夫、
新しい朝はあなたの前に訪れます。
 
晴れ渡った空には小鳥がさえずり
そのどこまでも澄んだ空気を
胸いっぱい深呼吸すれば
 
明日もその次の日も、
またこの朝に出会えると信じられる。
ひとりの夜も震えずに眠れる。
新しくドアをノックする音が聞こえてくる。
 
もう一度
誰かを愛したいと思える。 

きっとそれを希望と呼ぶのです。




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もしも僕が
メールの返信をしなくなっても
誤解しないでほしいんだ

気持ちが冷めたわけじゃないし
フェードアウトしたいわけじゃない
他の子に気移りしてるわけでもない

ただなんとなく
そうしたかったけなんだ

あえて理由を問われれば
仕事が忙しいとかトラブってるとか
体調ちょっと崩してるとか
言い訳ならあるにはある

そしたら君はこう言うに決まってる
「メールの一本くらいできるでしょ」

僕だってそう思う
軽く返信すればいいってそう思う
君を安心させてあげたいと思う

だけど今はそうする気になれないんだ
なぜか返信したいと思えないんだ

ただなんとなく
そうしたいだけなんだ

決して君に
冷めてしまったわけじゃないのに




もしも僕が
つまらなさそうにしていても
不安にならないでほしいんだ

怒ってるわけじゃないし
君といるのが不愉快なわけじゃない
体調が悪いわけでもない

ただなんとなく
そんな気分なだけなんだ

しばらく一人にしておいてくれたら
いずれ戻ると思うけど
いつまでなのか今は言えない
どうしてなのかもわからない

でも君はこう聞くに決まってる
「私のこともう好きじゃないの?」

僕もそんな気がしてくる
会ってて楽しくないのなら
好きじゃないのかもしれないって
自分でもそんな気がしてくる

君が悪いわけじゃないんだ
でも前ほどに楽しいとは思えないんだ

ただなんとなく
そんな気分なだけなんだ

決して君を
うとましく思ってるわけじゃないのに




もしも僕が
今すぐプロポーズできなくても
優柔不断な男だと思わないでほしいんだ

君に不満があるわけじゃないし
もっと遊んでいたいわけじゃない
他の子と比べてから決めたいわけでもない

ただなんとなく
自信が持てないだけなんだ

もう少し待っててくれたら
少しは自信もつくかもしれない
だけど約束なんてできないし
君の未来を縛ることはしたくない

そしたら君は愛想を尽かすに決まってる
「もう待てない。他の人を探すから」

収入とか昇進とか
それだけのことじゃない 
ただ僕がひとりの大人の男として
家族を引き受けられるのか
何かひとつ、自分の柱が必要なんだ

いつかは君と、とも思ってるんだ
でも今はまだ考えられないだけなんだ

ただなんとなく
自信が持てないだけなんだ

決して君と
結婚したくないわけじゃないのに





「ただなんとなく」
僕はそんな風に生きている

どうして?なぜ?と
君はいつも理由を聞きたがるから
それらしく答えてはみるけど

ほんとうは
大した理由があるわけじゃない

「ただなんとなく」
そんな程度のことなんだ

そんなのいいかげんだって
君は怒るかもしれないけど

男なんて
そんなもんだと思うんだ





君を好きだと思うこの気持ちは
たぶん、たぶんだけど
前とそんなに変わってない

だけどときどき
疲れてしまうことがある
少し休んで
ひとりになりたいことがある

催促のメールや電話がくるたびに
逃げ出したくなってしまう

申し訳ないとは思う
もっとがんばりたいとは思う

だけどヤル気がおきないんだ
 
そんな自分が
だんだん僕も嫌になる
この付き合いが
だんだん重くなってくる

決して君を
嫌いになったわけじゃないのに





君が楽しそうにしていたら
僕もなぜだか嬉しくなる
 
君が不満そうにしていたら
僕もなぜだか気が沈む
 
君が泣き出してしまったら
僕はその場から
ただ逃げ出したくなってしまう

君に夢中になるほどに
楽しくなったり落ち込んだり
いろんな気持ちが乱高下するけど
 
それをどうしたらいいのかなんて
誰も教えてくれなかった

慣れない気持ちをただ持て余し
途方に暮れてしまった僕は
なぜか無性に
ただなんとなく
ひとりでいたいと思うんだ

こんな曖昧でいい加減な
なんとなくなこの気分を
君にどうして伝えよう
 
言葉を尽くせば尽くすほど
僕のほんとの気持ちとは
どんどん違うものになる

こんなとき
どうしたらいいのかなんて
誰も教えてくれなかった




泣くな負けるな怖がるな
よそ見をせずにしっかりやれ
男なら
男だろ
そう言われながら育ってきた

虫採り魚釣り木登り
仮面ライダーごっこにプロレスごっこ
休み時間は校庭に出て駆け回り
部室でゲラゲラ馬鹿話
マンガは冒険モノかスポ根モノ
ときどきエッチな本も回し読み

自分の気持ちのことなんて
お道具箱の一番下に入れたまま
小学校に忘れてきた

女の子たちが
みんなでトイレに連れ立って
小さなメモを交換して
放課後もずっとベンチに座って
飽きもせずに毎日毎日
何をそんなに話してるのか
僕にはさっぱりわからなかった

女の子の気持ちのことなんて
先生も監督もコーチも先輩も
誰も教えてくれなかった





ようすを伺うメールが来るたびに
ぎこちない作り笑いを見るたびに
泣きそうに歪んだ顔を見るたびに

僕は途方に暮れてしまう

そんな君じゃ
決してなかったはずなのに
君がやさしく笑う顔が
何より僕は好きだったのに

不機嫌な君を
どうしていいかわからない
 
君の不安が
どこからくるのかわからない

きっと僕が悪いんだろう
それはうすうす気づいてたけど
どうしたらいいのか僕にはわからない
誰も教えてくれなかった

自分のこの気持ちでさえ
どうしていいのかわからずに
僕は途方に暮れている





君と出会って好きになって
かわいくて
やわらかくて
やさしくて
僕はまるで天にも昇る心地だった

だけどときどき
自分が自分じゃなくなるような
おかしな気分にもなっていた

甘酸っぱい気持ちに浸っていたら
君の機嫌に振り回されていたら
君のやわらかさに溺れていたら
 
僕は男じゃなくなってしまう

だからときどき
疲れてしまうことがある
少し休んで
ひとりになりたいことがある

ただなんとなく
ひとりになりたいだけなんだ

決して君のせいじゃない
このままじゃ
僕が僕でなくなってしまう
ただそれだけのことなんだ





もしも君が
僕を信じられなくなっていても
どうかもうしばらくのあいだだけ
見守っていてくれないか

不誠実だとは思わずに
思いやりがないと言わずに
気持ちがないと泣き出さずに
見守っていてくれないか

もっと器用な男を探すと言うのなら
引き留めようとは思わない

面倒な男はいらないと言うのなら
振ってくれてもかまわない

情けない弱い男だと思うなら
立ち去ってくれてかまわない

この沈黙が
僕の答えだと決めつけるなら
そう思ってくれてかまわない




でもひとつだけ頼みがある
 
もし君が
別れを決めてしまっても
二度と僕とは会わないと
心を決めてしまっても

僕のこの気持ちまで
なかったことにはしないでほしい

うまく言葉にはできないけれど
君を説得するだけの
つじつまの合う理由などないけれど

好きだと言ったあの気持ちは
抱きたいための嘘じゃない
 
君がよろこぶ顔が見たくて
何だってできそうな気がしてた

あのときの僕は無敵だった
ほんとうの僕より
ずっとずっと無敵だった

ただ君が隣で笑っていてくれたら
それだけで僕は幸せだったんだ


 

我慢を重ねて噛んだ唇も
不安と悲しみに歪んだ顔も
きっと僕のせいだろう
まちがいなく僕の力不足だろう

だけどこれだけは言わせてほしい
僕は僕なりに
君を大切に思ってはいた

その気持ちはたぶん今も変わってない
今だって君を思っているはずなんだ




でも
僕は僕に戻りたい

これだけは絶対に譲れない
「ただなんとなく」なんかじゃない
今はっきりとそう決めた

君を好きになる前の
ひとりの男に戻らなければ
僕が僕でなくなってしまうから

こんな勝手な僕だけど
君に気持ちがまだ少しでもあるのなら
 
どうか信じて待っていてくれないか

しばらくのあいだひとりになって
このひっそりとした沈黙の中で
ゆっくりと軋むような音を立てて
 
僕は僕に戻るから

そしたらまた君に会いに行く
 
理由も気持ちも関係ない

僕が僕を取り戻せたらそのときは
ただ君に会いたくなると思うんだ

ただただ君を抱きしめたいって
 
心から
そう思えると思うんだ









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中井久夫さんという精神科医のエッセイに「不安のにおい」という文章がある。

においというのは意外な力をもっています
 

においは触れることの予感でもあり、余韻でもあり、人間関係において距離を定める力があると思います

においのもたらすものはジェンダー(性差)を超えたエロスですが、そういうものの比重は、予想よりもはるかに大きかろう。

たとえば町には町の、それぞれの家にはそれぞれの家の独特のにおいがある。町のにおいがするのはその町にいるから。その家のにおいがするのはその家の中に入ったから。

においがするということは、もう触れられるほど近くにいるということ。町でも家でも人でも。

好きな相手のにおいもある。触れるどころかぴったりと抱き合った男の体臭は、「心地いい」を超えて体に染み込んでくる。直接的に。肉体的に。好きな人とはずっとくっついていたい。においを感じるほどに近く。

においにはそういう本能に訴えかける力がある。それはまあわかる。この文章のすごいのはこの先。

以下、しばらく抜粋します。



逆に人同士を離すにおいもあるんです。

今は精神病院も清潔になったし、みんな風呂に入りますから、あまりにおいませんけれども、昔の精神病院というのは、独特のにおいがありました。とにかくあのにおいは何のにおいだろうと思ったけど、長らくわかりませんでした。ただ不潔にしているというのではないんです。浮浪者なんかのにおいと全然違いますから。

ある患者さんと面接したんですが、その人を不安にさせるようなことを言ってしまったんです。途端に、たぶん口の中から出てきたんだと思うんですが、そのにおいがしたんです。

口の中というのは、内臓全部のにおいですから。体の中からすぐ何か出たんです。

とにかく例のにおいがしたんです。パーッとにおってきた。

ぼくは、これは不安のにおいだなと思いました。不安のにおいというのはリルケの『マルテの手記』のなかに出てくるんですけれども、こちらを遠ざけるにおいなんです。

つまり、その場から去らせたくなるにおいなんですね。

不安になった人間が放つにおいというのは、ひょっとしたら他の個体を去らせるような作用をしているのかもしれない。

だから、不安になった人が孤独になっていくということは、大いに考えられるんです。



このにおいについて、著者はこう考察する。

たとえばむかしむかし、人間の群れにオオカミのような肉食動物が襲ってきて、最初に気がついた人間が不安になってあるにおいを出す。すると群れの人間はみんな、においを出す人間から離れたくなる。

離れて逃げた人間もまた、不安のにおいを出す。するとその先にいた人間も逃げ出す。

そうやって集団がばらけていく。くっついていた人同士が離れて逃げ出す。一人か二人はオオカミに喰われるかもしれないが、集団としては生き延びられる確率が高まる。

そういう「警戒フェロモン」のようなものが人間にはもともとあって、それが「不安のにおい」ではないだろうかと。

不安になった人間が出すにおいは、お互いに「危険だ、遠ざかれ」という警告ではないか。不安が伝染するというのはそういうことではないかと、著者はそう書く。



こういうもの(不安のにおい)は、意識させたら役に立たなくなるものだから、意識に上らないようなかたちで、人間の行動を規定しているのかもしれません。

この種のものが人間の行動を規定している力というのは、非常に大きいのではないかというふうに、私はだんだん思うようになりましたね。


……多くは語るまい。

不安的中。思考は現実化する。
ネガティブがネガティブを引き寄せる。
負の感情に囚われていれば、人が寄りつかなくなる。
 

根拠のない不安が彼を遠ざける。

言葉にも表情に出さなくてもなぜか彼に伝わってしまう。

最も近くにいる彼が逃げ出さずにはいられない、
彼女が発する「不安のにおい」。






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私が好きなバラのひとつ、「ナエマ」。その一番の魅力はなんといってもその香り。

なんともいえない芳しい香りで、しかも強い。1輪咲くだけでもたちまち香るし、何度も何度も嗅ぎたくなる、一度嗅いだら忘れられない、すごく良い香り。

実はこの「ナエマ」、ゲランの香水にちなむ名です。カトリーヌ・ドヌーブに捧げられたと言われるゲランの代表作。その香りを花で再現しようと、このバラが作出されました。




ゲランの香水「ナエマ」の由来は、アラビアンナイト。千夜一夜物語の中に出てくるお姫様の名前です。




瓜二つの顔をした双子の王女がいた。ナエマ姫とマハネ姫。二人は同じように美しかったが、生まれ持った性質は全く異なるものだった。

ナエマ姫は好奇心旺盛で神秘的な強さを持つ、情熱的な「火の娘」。

マハネ姫は甘やかであたたかく、優しさと思いやりに満ち忍耐強い「水の娘」。

ある日、国を訪れた予言者が手厚いもてなしに対する感謝の印として、二人の運命が閉じ込められた二つの小箱を王女たちに手渡してこう言った。

「正しい時がくるまで箱を開いてはいけない」。

やがて二人の王女は美しく成長し、ある日一人の王子と出会う。そして二人とも王子に恋をしてしまう。

ナエマ姫は、この恋の行方がどうしても知りたいと〈運命の小箱〉を開けてしまう。

マハネ姫の運命の小箱には水の流れが、ナエマ姫の小箱には炎の花が。

それを見たナエマ姫は自らの運命を悟った。安らぎの象徴であり、この世の生命を育み、どんな形にも優しく寄り添い流れ続ける水。愛の象徴であるがゆえに、そのあまりの激しさゆえに、すべてを焼き尽くしてしまう炎。

王子をマハネ姫に譲ることを決意したナエマ姫は、人知れず、どこへとも知れず、黙って姿を消したのであった。
 




ナエマは不安から待ちきれなくて
箱を開けてしまったのかもしれない、

そうじゃなかったのかもしれない。

小箱を開けて運命を知りたいと思い立ったとき、ナエマは不安に支配されていた。「王子と結ばれるかどうか」という不安、そしてそれ以上に運命という「自分にはコントロールできないもの」への不安。

自らの力で運命を切り開くのが「火」の力。流れに身を任せるのではなく、すべてを焼き尽くしながら前に進む。焼け野原には新しい生命が芽吹く。

そうした火の性質を持つナエマにとって、運命をそのまま受け入れるのはこわい。ただ黙って待っているだけではダメだ、動かなければという不安に駆り立てられる。

女性によくある「白黒つけたがる性質」と似てなくもない。

でもその後が、ナエマの本当の強さ。運命の小箱を開けたナエマは、自分の運命を知り、マハネの運命をも知り、その運命を受け入れて身を引くことを決意する。自分がいたら王子とマハネは結ばれない。だから黙って姿を消す。覗いてしまった小箱の中身をなかったことにはしなかったし、どうにか運命を変えようとあがいたりもしなかった。

ナエマがその炎で焼いたのは、マハネでも王子でもなく、自分の恋。未練も執着も焼き尽くす。

少なくともナエマにとっては、運命の扉を開けたことは間違いじゃなかった。運命を知り、受け入れて、自ら決断して行動する。恋は失ったけれど、コントロールできないものへの恐れは手放せた。ナエマにとっては王子に選ばれることをただ待つよりも、その方が幸福だったに違いない。

火の性質を持つナエマは、運命を切り開きながら生きる。小箱を開けたその先にどんな運命が待ち受けていようと、自らが決断して生きる。それがナエマの幸せ。

予言者は「正しい時がくるまで箱を開いてはいけない」と言い残した。ナエマはそれより早く小箱を開けたわけじゃない。ナエマにとっては、自分が開けたいと思ったときがそのときだったということ。




じゃあマハネ姫はどうだったか。主役はナエマなので、詳しい話は書かれてないのだけど。

運命の小箱をついに開けることはなかったマハネ。王子に寄り添い、運命にも寄り添う。心優しく、すべてを受け入れて育んでいくマハネ。それが「水」の力。ナエマが去った後は、王子と穏やかに幸せに暮らしたに違いない。

だから幸福を手に入れたのはマハネだったかといえば、それは違う。

自分の運命なのに知ろうともしない。忍耐強いというけどいつまで待つつもりだったのか。積極的なナエマが、運命の小箱を開けずに王子に告白してたらどうだっただろう。ナエマの情熱に王子がコロッとまいってたらどうだっただろう。それはそれで、運命だと静かに受け入れたに違いない。

水の性質を持つマハネは、ただ運命に身を委ねて生きる。どんな運命がその身に降りかかろうとも、それに寄り添って生きる。それがマハネの幸せ。

「正しい時がくるまで箱を開いてはいけない」と予言者は言ったけれど、マハネはそのときを待ったわけじゃない。たぶん彼女は運命の小箱を開けずに終わる。マハネにとっては、それが正しいときということ。




ゲランのHPにはこうある。
 


This duality of intensity and tenderness is what Jean-Paul Guerlain wanted to depict with his perfume.

〈強さと優しさという二重性こそ、ジャン·ポール·ゲランが香水で表現したいと願ったものである〉





もしかしたらナエマとマハネは、同じ一人の女性ではなかったか。



ナエマのような火の性質も、マハネのような水の性質も、女性は両方持ってる。

情熱的で謎めいていて、それでいて強い。白黒ハッキリつけなければ許さないという態度。運命を左右するときほど、そのときを待てない。そいういう火の性質が女にはある。

そして優しく寄り添い生命を育む慈愛、男にはないしなやかさ。運命の小箱を開けずにそのまま抱きしめて生きる力。そういう水の性質も女にはある。

強さも優しさも、どちらも一人の女性の心の中にある。

NAHEMAとMAHANE。日本語にするとわかりにくいけれど、二人の名前はアルファベットを置き換えたアナグラムになってる。見た目はそっくりな、別々の性質。

火と水の性質をあわせ持つ一人の女性が、どちらかを選べばナエマの人生を生き、もう一方を選べばマハネの人生を生きる。運命の小箱だなんてもったいぶったって、ちょっとしたことで人生はくるりと反転する。ナエマとマハネの名前みたいに。きっと何度だって変わりうる。

「運命は大島の表と秩父の裏とを縫い合わせる」と夏目漱石は書いた。「縫い合わされた大島の表と秩父の裏とは覚束なき針の目を忍んで繋ぐ、細い糸の御蔭である」。

まったく性質の違う織物をも縫い合わせてしまう、運命の細い糸。おぼつかなくたって頼りなく不安だって着心地が悪くたって、運命とはそういうもの。気に入らなければ糸をほどいてまた縫い直せばいい。ほどけなければ引きちぎったっていい。どうせ細い糸なんだから。どうせまた縫い合わせるんだから。




姿を消したナエマは別の王子と出会ってまた恋をしたかもしれない。王子と結ばれたマハネは何か問題を抱えたかもしれない。運命の小箱を開いたらそれで終わりじゃない。
 

開けようと開けまいと、人生は続く。
開けようと開けまいと、幸せとは関係ない。

運命を切り開くか、
運命に身を委ねるか。

ナエマになるか、マハネになるか。
運命の小箱をいつ開けるのか。


自分が決めればいいだけのこと。
 
運命ってそういうこと。


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まっすぐに望む言葉は、人の心を動かす。

幼い子どもは邪心なく望みを口にする。そこに飲み物などなくても他人様の家でも「喉が渇いたからジュース飲みたい」と言う。もらえなかったら何度か言う。もらえるまで口にする。言ったら嫌われちゃうとか言わない方がいい子だと思われるとか、そんなこと考えない。どうしてももらえないときはぐずったり泣きわめいたりもするけれど、だからってくれないママを大嫌いにはならない。

ただそこに、自分の心からの望みがあるだけ。

そのことをママは知ってる。この子がそう望むときは、本当に喉が渇いているんだと知ってる。だから泣きわめく前にちゃんと飲ませてくれる。子どももちゃんと知ってる。ママはいずれちゃんと飲み物をくれること。

大人になると、そんな風には望みを口にできなくなる。口にできなくなるどころか、望みを抱くことにすらも罪悪感を持ってしまう。「ここでそんなことを言うべきではない」という理性や分別がまずある。でもそれは建前のこと。


 

本当の望みを口にできない理由は「恐れ」。

理性も分別もない大人だと思われることへの恐れ。
嫌われてしまうという恐れ。
もらえなかったらという恐れ。
拒絶への恐れ。
傷つきたくない失望したくないという恐れ。

恐れを持つのは、自分を信じられないでいるから。「こんな私の望みが届くわけがない」と決めつけてしまうから。愛されない自分だと思い知りたくないから。だから望みは伝えないでおく。そもそも望みなんてなかったことにする。伝えなければ拒絶もされない。それなら安全。

ときどき、「望みらしきもの」を分厚いオブラートで何重にもくるんで、それでも不安でビクビクしながら彼に届ける。でもそんなもの呑み込めるわけない。彼はその「望みらしきもの」を喉に詰まらせて、黙る。自分を傷つけないようにした偽物の望みが、彼の息を止める。

そしたら「ほらね」って「やっぱりダメなんだ」って彼女は言う。だから彼は信じられないんだって思う。だけどそもそも信じてなかった。自分を信じられないから相手のことも信じられない。「本当の望み」は隠して偽物を渡す。いつもそう。本当の望みは届かないし、彼の心は動かない。





ミスチルの〈and I love you〉という曲がある。

君には従順を 
僕には優しさを

互いに演じさせて 
疲れてしまうけど

それでも意味はあるかい 
どう思う?

今も欲しがってくれるかい?
僕を

傷つけ合う為じゃなく
僕らは出会ったって
言い切れるかな


「男は自分から求める。狩りをするから」というセオリーがあるけど、それはうまくいってるときの話。出会ってアプローチをするときとか、すべてが整ってプロポーズとなったとき、男は自分で決める。決断するのは自分でありたい。それはわかる。

だけど彼にだっていろいろある。いろいろ事情があって環境の変化があって心境の変化もあって、今まですんなりやれてたはずのことがやれなくなるということはある。私がレポートを書かなくなってしまったみたいに。

「それでも欲しがってくれるかい」なんて、そんなこと聞く自信のない男は見切れという意見もあるかもしれない。もっとちゃんとした男を選べばいいって。

だけどいつも寛大でいつも余裕がある、そんな男は世の中にいない。

自分が本当にギリギリのときでも惜しみなく愛情を注いでくれる、そんな男はいない。いるならよっぽど他で手を抜いてるか、よそに迷惑をかけてる。誰だって悩むし自信がないし、いっぱいいっぱいで壁にぶつかることはある。「こんな自分じゃ愛されるわけない」って思うことはある。

そのときこそ、自分の本当の望みを伝えられるかどうか。

無力で打ちのめされていっぱいいっぱいで何もできなくなってしまった彼に、「それでもあなたの存在が必要だ」と伝えられるかどうか。要求もコントロールもせず、見返りも期待せず、自分を信じて、彼を信じて、オブラートにも包まず、恐れに負けず、無垢な子どもの心で、

心からの本当の望みだけを、
シンプルにまっすぐに伝えられるかどうか。

もしも伝えることができたら、
その言葉はきっと彼の心を動かす。

すぐには届かなくても、
いつか届くと心から信じることができていれば、
ちゃんと届く。

彼に伝わる。





ミスチルの歌はこう続く。

もう一人きりじゃ飛べない
君が僕を軽くしてるから

心からの無垢な望みは、人にそういう力を与えることができる。重すぎて飛べなくなってしまうような要求じゃなく、二人でいることで彼がまた飛ぶことができるような。彼女のためにやってやろう、そういう強さを与えられる。

ジョン・グレイの本にも書いてある。

彼女が自分と一緒にいるだけで幸福であるということを確信できれば、より力を与えられ、やる気が湧いてくるのである。

これは男が穴ごもりしてるときのこと。

 

自分という存在に、
ただ幸せを感じてくれる彼女がいる。

そんな彼女の存在が彼の力になる。
お互いに相手の存在が力になる。
そしたら自分を信じられるようになる。
相手を信じることもできるようになる。

そういう女を、男は絶対に手放さない。




私を信頼してくれた誰かが人に言えない秘密を打ち明けてくれたり、頼ってくれたり相談してくれたり、そうやって誰かのまっすぐな望みが自分に向けられたら、ただそれだけで力になるものです。すごく嬉しいものです。本当に。

それがその人の本当の望みなら、迷惑とか重いとか全然思わないものです。「応えなければ」とプレッシャーに思うのじゃなく、「応えなかったら嫌われる」という恐れもなく、「応えてみたい」と心が動きます。自分にできるだけのことはしてみようかと、そんな気持ちになるものです。

もちろん恋愛になれば、期待はもっと強くなるし求めるものも多くなる。拒絶されることへの恐れは、ものすごく巨大に膨らむこともある。それを手放すのはなかなか難しいかもしれない。

だけど伝えてみる価値はある。

邪心のない望みを伝えることで「彼は愛してくれるか」と試すのではなく、「それが彼の力になるのかもしれない」と自信を持って。

ただしよこしまな下心は必ず伝わる。

人って不思議だけど、どんなに隠してもそういうのはわかる。偽物の望みを届けてくる人のことは避けたくなるもの。伝えていいのは心からの、本当の望みだけ。子どものようなその純粋さが、人の心を動かすことはある。




 


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